5/12岸田順子リサイタル ~ごらんよ空の鳥~ オルガン・山口玲子 ピアノ・須江太郎 府中の森芸術劇場 ウィーンホール
前回のブログで5/12岸田順子リサイタルのリハーサルのことを書きましたが、先日その本番のリサイタルが開催されました。(岸田順子先生についてはこちら→人生の質を変えた師との出会い)
それは大変素晴らしい演奏会となり、私はここに演奏会の理想の姿を見た思いがします。
このリサイタルの演目は、冒頭に歌われた「主の祈り」以外、演奏会のタイトルにもなっている「ごらんよ空の鳥」をはじめとして、すべて新垣壬敏先生の作品でした。
「主の祈り」は、教会の礼拝で必ず祈られるお祈りですが、それにA.H.マロッテが作曲した作品です。
岸田先生はよく「聴いている人を飽きさせてはいけない」とおっしゃるのですが、新垣先生の小品だけで構成されたプログラムは次から次へと魅力的な音楽が展開して、飽きるどころかどんどん魅せられて行きます。
曲の魅力、詩の魅力、歌の魅力、オルガンとピアノによる伴奏の魅力…。
「満たされる」という感覚でしょうか…、とにかく圧倒的です。
ものすごい熱量が体に入り込んできます。
特に大きな響きでも、音量でもありませんが、あたたかいエネルギーに満たされてゆきます。
そしてそれは私だけが感じているのではなく、客席の方々も同じように感動している空気がホールを満たして行くのです。
演奏者と聴衆とが一体となる感覚…
もっと言えば作品と演奏者と聴衆とが一体です。
岸田先生がすごいなぁ…と思ったのは、先生がそれを意図してひとつひとつ創り上げて行かれたことです。
選曲からホール選び、ホールに響く音響、チラシやプログラムなどの印刷物、作曲者や共演者に対する心配り、あるいは足を運ぶお客様に対しての心配りなど、すべてにおいて気を配っていらっしゃいます。
今回、私は会場の手配や印刷物の作成、当日の会場の受付などをお手伝いさせていただきましたが、それを通してその気配りのすごさを実感しました。
その気配りや心配りは、当然歌詞の発音一つ一つにも、音のひとつひとつにも注がれます。
それが共演者を巻き込んで客席に伝わり、やがて客席からも感動があふれ出るのだ、と思いました。
最後に、皆様ご一緒に歌いましょう、というプログラムがあり、「ごらんよ、空の鳥」を客席の人々も含めて全員で歌ったのですが、それはもう、信じられないほど美しい響きでした。
演奏者と来場者が一緒に歌う…という企画は時々ありますが、あんなに美しい響きは聴いたことがありません。
もちろん聴衆の中には、聖歌隊のメンバーだったり、新垣先生の教え子で、学校の行事でこの曲を歌ったことがある、という人も多かったのでしょう。
また岸田先生の歌を聴いた直後で、美しい響きが耳に残っていた影響も大きいでしょう。
でも、それ以上のものを感じました。
生涯忘れられない音楽の一つとなりました。
この演奏会を通して感じたのは、自分の信じる道を、全身全霊で、誠心誠意を尽くして生きることの大切さです。
すべてのレッスンを大切にしたい…それがピアノ講師としての私の信念ですし、
すべての人を大切にしたい…生徒さんであれ、その生徒さんを任せてくれる保護者の方であれ…
そしてどんな音も、音楽も、一音一音を大切にしたい…それは私の生きる信念です。
そしてそれは、決してレッスンの時や音楽に対する時だけでなく、いついかなる時でも、どんな時でも、この世に生きる限り、すべての時間において大切なのだと思いました。
そうそう、紹介し忘れていました。
岸田先生は今から11年前に喉にがんが見つかり、その時ステージⅣで余命宣告を受けられたのでした。
そこから先生は、それまで他人に対して行ってきた整体やアロマ、あらゆる施術をご自分に向けられて回復されました。
喉のがんを切除した時に奥歯を抜いたり、神経が切れたりしているので、一時は声を出すのも難しい状態でした。
そこからここまで回復されています。
だからこそ、生きることに対して常に真剣で、また感謝に満ちていらっしゃるのです。
その生きる姿勢に、私をはじめ多くの人が感動するのだと思います。
そしてもうひとつ、この演奏会のタイトルになっている「ごらんよ、空の鳥」の作詞者である菅野淳さんについて、アンコールの時に紹介されました。
「菅野淳」というのはある牧師さんのペンネームだそうです。
ある事故で「菅野」君と「淳」君という教え子を失った悲しみの中で、この「ごらんよ」を作詞されたです。
そうとは思えないほど明るい歌詞、明るい曲です。
どんなに辛い中でも神を信じ、感謝を捧げ、希望を失わない…という意味があったのだ…と初めて知り、この曲の奥深さを感じました。
「ごらんよ空の鳥」の歌詞と、演奏会のプログラムを下記に記します
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ごらんよ空の鳥 菅野 淳
ごらんよ空の鳥 野の白百合を
蒔きもせず 紡ぎもせずに
やすらかに生きる
こんなに小さな命にでさえ
心をかける父がいる
ごらんよ空の雲 輝く虹を
地に恵みの雨をふらせ
あざやかに映える
どんなに苦しい悩みの日にも
希望をそそぐ父がいる
友よ、友よ今日も 賛えて歌おう
すべてのものにしみとおる
天の父の慈しみを
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当日のプログラム
Ⅰ部
The Lord’s Prayer 作曲A.H.マロッテ pf.須江 太郎
(主の祈り) Org.山口 玲子
~新垣壬敏作曲作品を集めて~
ごらんよ空の鳥 菅野 淳 pf.須江 太郎
Org.山口 玲子
連作歌曲集 小さなわたしたちのワルツ 葉 祥明 pf.須江 太郎
Ⅱ部
素朴な琴(初演) 八木 重吉 pf.須江 太郎
吹きあげる(初演) 北原 白秋
たんぽぽの夢 薩摩 忠
オルガンのための越天楽のテーマによる変容 Org.山口 玲子
砂のうえの足跡 M・F・パワーズ Org.山口玲子
訳詩 坂牧 俊子
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