歴代のネコ紹介⑤ ～ ミュー

ミューちゃんは中村家に初めて迎えたネコです。

私の妊娠中、マンションのごみ置き場付近に迷い込んできたネコです。最初は人懐こそうに寄ってきていたのですが、誰かに邪険にされたのでしょうか、すぐに人に怯えるようになりました。その姿があまりにも気の毒で、生まれてくる子も、迷い猫も、同じ命なのに…と主人が言ったのをきっかけに、2人でホームセンターに行って猫缶とトイレを買ってきて保護しました。私がともに暮らした６匹のネコのうち、唯一のレディーです。

ミューちゃんは、なかなか厳しいネコでした。なぜか６時半になると、主人を起こすのですが、そのやり方が強烈…噛みついて起こすのです。私は毎朝主人の「痛いっ！」という大声で目覚めました。ある日６時半の少し前に目が覚めた時、主人の枕元を見たらミューちゃんがサメのように大きく口を開けていました。６時半の少し前からこの姿勢で待っているのです。びっくりしました。

また、変わった特技を持っていました。留守番電話の再生ができるのです。再生のキーを押すことを覚えてしまったのです。はじめは夜中に電話から声が聞こえるので、なぜ夜中に何度も電話があるのか不審に思っていました。それがある時、暗闇に浮かぶ猫の影を発見して謎がとけました。そして、声の好みがあることがわかりました。当時の私の上司と、車のディーラーさんの声が気に入ったらしく、録音されたらすぐに消さないと、ミューちゃんが何度も再生してしまうのです。

ひょっとしてこれはメスネコの特徴の一つかもしれません。隣のお宅のネコちゃんも―美しい三毛猫さんでしたが―登録した電話番号のボタンを押すことを覚えて電話をかけてしまうから…と、電話に大きな箱をかぶせていました。メスネコは器用なのかもしれません。

ミューちゃんは、娘が生まれる２ケ月ぐらい前にやって来たネコですが、その恩を忘れることはなかったようです。ミューちゃんは８歳で脳卒中のような状態になり、まっすぐ歩けなくなりました。流動食を食べさせたり、自宅で点滴をうったりしましたが、そんな状態になってもなお、当時かぎっ子だった娘を、体を引きずりながら玄関まで迎えに出てくれていたそうです。ネコは義理堅いし、子供を自分より弱い存在と思い、慈しむ…。忠猫という言葉があっても良いのでは？と思います。